統一戦線義勇軍

元暴走族総長が抱く「護国」の情

週間朝日 平成19年2月9日増大号掲載
特集「ニッポンの右翼」大研究③米国とネット右翼

 

「世界の実情は、どれだけ言論だ、自由だといっても、軍隊が動かないと政権は変わらない。僕は日本でも、自衛隊がクーデターを起こすぐらいにならないと、国は変わらないと思ってます」

と、”過激”意見を表明するのは、統一戦線義勇軍中央委員会の針谷大輔議長(41)だ。

統一戦線義勇軍は昭和56年、若手活動家が既成団体の枠を超えて新しい運動スタイルをつくるという理念のもと、一水会の木村三浩氏を中心に結成された。針谷氏は65年生まれ。横浜の暴走族の総長だったという経歴の持ち主である。

「もともと、小さいころから防衛大学校の学生になりたいと思っていたんですよ。ちょっと途中でドロップアウトして、横浜で暴走族とかしてて、それをやめたときに、これから何をして生きていこうかなと考えた。三島由紀夫がなぜ自決したのかを考えているうちに、自分も男として生まれたからには何か自分の身を賭けてやることがないかと思い、三島さんの本を読みあさったんです」

そんなときに一水会を知る。前代表の鈴木邦男氏、現代表の木村氏と出会い、「こんな人がいるなら、おもしろそうだな」と思ったのだという。それが19歳のころ。以来、85年に神奈川県逗子市の池子米軍住宅建設の反対闘争を展開。87年には地上げ問題で住友不動産の会長宅を襲撃し、逮捕された。96年には、短銃所持で実刑判決も受けている。

「いまは暴走族時代の仲間や後輩と一緒に、ということはないですね。やっぱり生活が犠牲になりますから。自分も、この間までタクシー運転手をしてましたが、今は友達のところの手伝いに行っています。何かしら働かないと食えないですからね」

現状の日米安保体制には原則反対の立場を取るが、戦略的には「必要悪」とも考えている。

「国を守れないことのほうがヤバイですから。戦争の要因には、経済、宗教、民族の対立がありますが、いまアジアで起こるとすれば、やはり経済戦争しかないでしょう。たとえば、もしも統一朝鮮ができたら100万人ほどの軍人が失業することになる。最初の政権が親日であっても、日本が相当な投資をしなければ、反日政権が生まれてしまうかもしれない。内政の不満を外に向けるため、竹島以外に対馬にも侵攻だとか、になりかねない」

こうした考えも、世界の歴史を振り返れば当然のことだという。

「隣国を信じないわけじゃないけど、信じていて潰れた国がどれだけあったか…」

針谷氏は、「ネット右翼」といわれる若者達の発言を、「飲みに行くと大口叩くヤツがいたりするのと同じぐらいのレベル」と切り捨てる一方、日本人の決起についてある種の「期待感」を持っているのも事実だ。

「いまの時代、ネット右翼も含めて、若い人たちが自分から行動することはない。ただ日本人というのは、もともとそうです。自分の身にかかって初めて、やる気を出す。そんなに皆が皆、強くないんですよ。だけど、いざ動乱になれば人は集まるものです」